ぶりの根性焼き

いわゆるエッセイなのかもしれない

私の嫌いなセルフライナーノーツ|解放迷路 - 片山さゆ里 cover

 

前置き

どうしてって、作品を個々人が楽しめるのは「余白があるから」だと思うのです。

 

いやたぶん、それだけだと、説明の言葉が足りない。

 

私たちはみな、経験も細胞も信念も違う個体たちであり、捉え方も感触も何もかもが別個で。言葉や傷の痛みがあっても「100%分かり合う」なんて不可能だ、って。

作品は「わからせる」ために作るんじゃなくて、一人ひとりが作品にフィットするような「なにか」を余白として内包している必要があると、そしてその余白が想像力を掻き立て、瞬発的な「共感」と成り、愛着が湧くのだと思っています。

 

違う言葉にすると「解釈はあなた次第」であるべきだと、いうポリシーが、ある。

 

私は、音楽も絵も、こういう脈絡のない手記も、受け取る側に解釈を委ねる。こわさもたくさんあるけれども、それは創作者としての勇気と、背負うべき運命だと思っている。
その分、普段の生活は人間関係対応を失敗しないように、怯えてにこにこ暮らしている。対人体力の負荷は、元気でなんとかやってるよ。

 

そう、例えば、私が作った曲を聴いてくれた誰かが、歌詞の中に見つけた凶暴さを私の全てだと解釈して、私をそういう人と思ってしまう。それはもう、仕方ない。

作品の楽しみ方がもったいないなあ、とは思うが。
だって、作品と、それを生み出す人間の人格は、それこそ別個なので。

 

話を戻します。

 

とにかく、作品の解釈を押し付けるような「セルフライナーノーツ」というのが、まあまあ、嫌い。

 

だけど「もっと知りたい」の想いも、最近知ってきた。

ならば、求められてなくとも、用意だけしておいて、求めた人がすぐに手に取れるようにしといてもよいのでは?と、考えました。
きっと「解釈を押し付けるもの」じゃなくて「解釈を広げるもの」にも、なり得る。

 

何よりも、これを書こうと、掻き立てられたのは

3/28(木)、片山さゆ里ラストライブ後、トリビュート参加曲の転調についてさゆゆと話していたときのこと。


ぶり「転調が多くなりすぎて、作るの大変だったー」

さゆ「私の歌が下手だからだね」

 

な、なにを言っているのだ…?

 

耳を疑った。誰だ、彼女にそんなこと思わせるきっかけ作ったのは?

いつもなら「すまんな、わたしの曲作りが天才的すぎるために」などギャグを飛ばすけれども、そう思ってしまった彼女を受け止めたくて、そして、ショックで何を言っていいかわからず、お口チャックミッフィーちゃんになった。

 

なにも言わないことで、そんな悲しい勘違いが生まれるならば。なるべく書いておきたいと、思った。残しておいて、いつでも誰かが見られるように、なんて、偽善を抱えたんです。

 

原曲について

youtu.be

歌詞載せていいかわからないので、耳コピのやつを一旦載せる。怒られたら消します。

 

蹲り曲がった背筋を伸ばして 少しだけ気が晴れるような痛み
内緒で囲った魚も逃して あなたに布かける春の光

二度と戻れないから 燃やして

ここで置いていくの 洗いざらい灰に変えて
歩こう 歩こう しがない心は
揺らぐまま 濁った目を洗っておいで

全て許せる夜は まだ
気持ちで頷いた
さよなら

ここで忘れるの 洗いざらい灰に変えて
歩こう 歩こう しがない心は
揺らぐまま 濁った目を洗っておいで

おそらく彼女の1stミニアルバムでしょうか。処女作なのでしょうか。のタイトル曲です。
弾き語りverはこれ

youtu.be

初めて聴いた時のこと、今でも覚えている。
真っ暗なライブハウスなのに、強く青空に光が差していた。さゆゆ、金髪やったし。

 

トリビュート参加経緯

アルカラという、我々が敬愛してやまぬバンドがいます。
私とさゆゆ、お互いが出会う前から好き。長い。

私がアルカラに出会った時とかもう、傷だらけの捨て猫フシャー状態でした。
暴力性とか凶暴性を、このバンドに優しく昇華してもらった。
好きなバンドTOP3を聴かれたら、必ず入れるバンド。

そんなアルカラが、2023年8月、対バンを募集企画をやってくれた。え?
しかも、オリジナルバンドだけではなくて、コピーバンドも。は??

「やろう」と、さゆゆの予定も聞かずに募集URLを送った。

 

その時に出した曲のダイジェストがこちら(記事書きながら速攻作った。荒くてごめんなさい)

www.youtube.com


MOROHAとアイドルやろうぜ!!!という謎すぎるテンションで行った。どうして?

もちろん選考からは落ちました。そして、アルカラの稲村さんから直接、ただのファンには勿体無い、素敵なメールをいただきました。
一生の宝物だし、葬式の時はプリントアウトして棺桶に入れて欲しい。

 

この時、私に沸いてしまった、カバー欲求。

実はこれを録音したのは片山さゆ里作品集④を録音した直後。まじで直後。我が家の宅録スペースで「お疲れ様〜!」をやった、直後。極限。
※片山さゆ里作品集③〜⑤は、我が家で宅録しています。録音ミックス担当でございやす。

 

そうして、彼女の弾き語り音楽人生の終幕を聴いた時、つい、言ってしまった。

 

「トリビュート企画、やってくれん?(投げやり)さゆゆが私に歌ってほしい曲を、歌うよ」

 

「解放迷路でお願い。あなたの声の伸びやかさが聞きたい」

 

もちろん!

 

セルフライナーノーツ〜2024年1月

2024年1月1日。
多分私はこの時、競プロのやりすぎかなんかのやりすぎてフワッフワしていた。そしたら、ゆらゆらした。世界が。

 

北陸の震災が、起きた。

 

さゆゆが富山県に帰っていることは知っていた。
うん年ぶりの年末年始帰省だ、って喜んでた。頭が真っ白になって、考えすぎて、考えすぎて「大丈夫?」を、送れなかった。
送ってしまったら、返す義務を抱えさせてしまうから。

 

そして何よりも、絶対に大丈夫だって、信じていた。

 

1月末、楽曲制作に取り掛かった。
原曲を聴きながら浮かんだのは、燃え盛る震災地の風景。

あなたに布かける春の光

二度と戻れないから 燃やして

ここで置いていくの 洗いざらい灰に変えて

とてもじゃないけど、歌えなかった。
涙が止まらなくて、声が出なかった。

 

そして、先延ばしにした…

 

セルフライナーノーツ〜2024年2月

私は就職前に、2週間かけて西日本と北海道を巡り、全都道府県埋めをしていました。


運転中、暇で暇で仕方なかったので、たくさん考えた。
これからのこと、今までの失敗、自分のこと、誰かのこと、あなたのこと。

 

そして、頭の中でアレンジを固めていった。
あとは帰って、このぐちゃぐちゃな気持ちと、それでも「歩こう」と強かに繰り返すあのうたを、誰もが聞けるように外に出そう。この頭の中と、心の底から。

それが、私にできる、精一杯の北陸への追悼だった。

 

帰宅してから、作曲のために1日を空けた、が、ここからが地獄だった。

 

はて。己が天才すぎて、転調のコードがわからない(ちなみに、いまだにわかっていない)

 

というか、なんでこんなにテンポもコードも変わるの?どうしてそうなったの??

本当、単純で「感覚的に、各セクションが一番気持ち良いテンポと、自分の声の伸びが一番良いキー」をただただ選んだだけ。そのツギハギをどう行うか。というか本来行うべきではないものを、繋げるという謎作業だった。

 

それでも、作らなきゃいけなかった。
誰かのためじゃなくてさ、自分のために。

 

「トリビュート企画、やってよ」を叶えてくれた、今日で終わりを迎えた、大好きな友達、片山さゆ里が、聴いてくれた時の反応が欲しい、そんな自分のために。ね。

 

ちなみに歌はほぼ一発録音。
仮録音のつもりで勢いで録ったワンテイクがすごく良かったから、少しだけ直して、コーラスも入れなかった。一人でギター持って歌ってきた、さゆゆへの敬意として、ね。

これがリアルだよ、ぐはは!

 

そんな感じでした!

 

改めて、本当におつかれさまでした。
10年間、ありがとう。これからもよろしくね!

 

無料ダウンロードはここからどうぞ!2曲目です!

sayuyu.booth.pm

 

www.youtube.com